2010年度デザインコース第2回
パーマカルチャー塾 デザインコース(第2回)
2010年4月3日(土)
講師:設楽清和
1.第1回のレビュー
(1)第1回のまとめ(添付1)の発表
(2)デザインについて
「デザイン」=本質を理解し、ないものを作り出すことを基本とする。
「イデア」=個別の事物の背後には、その本質であるイデアが実在する。もの・形が変わっても永続する。根本にある本質。
「デザイン」の2つの方法:①多様性を尊重し、②共通にある不変の本質を見据える。
添付1:
2. パーマカルチャーの基礎
パーマカルチャーは、「永遠」「文化」を意味し、「永遠」であるものは、「生命・自然」「文化」である。それらの基であり、パーマカルチャーの基礎となるものは、(1)感性、(2)伝統文化、(3)科学である。
(1)感性
「感性」で、「自然=Reality」の理解に挑む。現代社会においては、情報や常識にとらわれ、物事がそれぞれ異なることを感じ、理解する力、自然からのメッセージなどを読み取る力が衰えている。常識にとらわれず、Realityを見て、感性を取り戻すことが必要。
<パラダイムシフト(トーマス・ク-ン)>
当然のことと考えられていた認識や思想、社会全体の基本認識(パラダイム)が、問題解決のために新しい発見や経験が蓄積し、ある時期に、問題解決につながる劇的な変化(シフト)がもたされる。
<カオス理論/振り子理論/バタフライエフェクト>
ほんの少しの差異や変化が、最終的に大きな変化を生み出す効果があること。
⇒誰もが参加できる「パーマカルチャー」を個人が採用し、生活の基盤として取り入れることにより、社会に第一投目の変化をもたらし、現代社会が直面する矛盾(環境問題)の解決を図る。
(2)伝統文化
現在の日本において、伝統文化が継承されなくなったのはなぜか?現在、人々は、「お金」を求める価値観のもと、お金を得るための労働(資本主義)を重視している。そのような中、伝統文化がシステムとして維持され、社会に必要とされ、結果として無理なく継承されることが困難になっている。
<人間の3つのしごと:ハンナ・アレント「人間の条件」>
労働(Labor):人間の生命を継続するための行動(古代社会では、奴隷のしごと。)すぐに消えるもの(消費物)を生産し、お金と交換。(私)
仕事(Work):自己表現を行う作業。永続的な作品(耐久財)を残す作業。(私)
活動(Action):言論活動などで社会を動かしていくこと(政治活動)。(公)
現在社会では、上記のうち、「労働」に特化する作業が多く、労働・消費・お金の関係のサイクルに留まっている。
一方、伝統文化は、上記「労働」「仕事」「活動」のすべてを含んでいる。伝統文化の中には、「労働」「仕事」「活動」のバランスをもって、人間の内的な満足度を満たし、自分自身の価値が表現できた社会が形成されていたといえる。
パーマカルチャーは、人間の生命を継続するための行動を「仕事」の中に取り込む試みでもある。また、属する社会に関わる方法、自己表現としての機会、お金と違う価値観を追求する。
参考文献:向井周太郎著「デザイン学」では、ヨーロッパがお金と違う価値観を求めているか、人間らしい社会がどのように形作られてきたかを考察。
(3)科学
未来に起こりうることは予測不能であるが、「科学」は、自然現象などを全ての人々が理解できる言語として表現し、一般化して見せる道具である。「科学」を通じ自然・文化をより予測可能にし、安心へと導く。
3. パターン(型)とシステム
パターン(型)=最もエネルギーを有効に利用できる型。自然は無駄を作らず、より多くの命を生かしている。また、宇宙=エネルギーが地球の生命の豊かさ(多様性)を生み、永続性を形作っている。自然は生命の総体であり、命と宇宙の結びつきを示している。自然の型はある目的を達成するのに最も適した形であり、それを我々の生活の中に取り入れると高い機能性を確保することができる。
パターン(自然の中にある型)の事例:
円:丸い石等
螺旋:貝、渦潮、旋毛等
宿題(課題)
自然の中にある型を3つ探し出してくること。
探し出してきた型のうち、1つの型でデザインした実用性を備えた商品を考えること。
4. Crystal Watersの事例紹介(スライド映写会)― 食事後
Crystal Waters(オーストラリア)についての紹介。Crystal Watersは、もともと過放牧地であった270ヘクタール規模の土地に、世界で始めてパーマカルチャーを採用して作られたエコビレッジ。85軒が13のクラスターに分かれて暮らしている。総面積のうち、15%が居住地、85%が畑等を含む緑地。23の小規模ダムが点在し、スウェールによる水のネットワークが形成されている。1軒あたり4600エーカーを有し、家は基本的にSelf-built。オーストラリアでは、住居法の制限があるため、「共同管理」のアパートとして扱われている。Permaculture Research Institute、ガイヤトラスト(財団)支援によるEco-Village Design Educationという教育施設も存在する。
<紹介された写真>
3Dの農場(果樹、あひるの共生関係)
ガーデンベット(カンナ、サトウキビなど、深く根をはる植物が周りに植えられ、根から進入する雑草を防止。)
素焼きの器の中に堆肥と水をいれ、畑の真ん中に設置⇒水分と栄養分を畑に与える。
チキントラクター、ラビットドーム(鶏は1週間で雑草を食べつくし、その後1週間で虫を食べつくす⇒2週間で別のドームに移動。)
2010年4月4日(日)
講師:四井真治
1.農業を学ぶということ
農業を知るということは、まずは土の構造を知ることが第一である。便利になりすぎた現代社会はヒューマン•スケールサイズを逸脱している。その結果現代人は生活技術が低下し、人格形成にまで影響を及ぼしている。その中で園芸療法・生活療法の価値が新たに見直されている。まずは、フィールドに触れてみることが大切である。自給自足の暮らしの努力をすることは、人の力に頼ること、コミュニティに参加することにもつながる。ビル・モリソンは哲学は決してひとつでないと説いている。自然と向き合うことで哲学が生まれ、生きていくための力を身につけることができる。
(1) 土のしくみを考える。
農業は環境破壊と捉えられる場合がある。森・草原は耕さなくても、地力を維持する能力があるが、人間の手が入り、過剰な施肥をすることで土壌が変化し栄養成分が切り離されてしまうからである。例えば断粒構造はトラクターの過度な耕転により、壊されてしまう。
土を見ていく場合、まずは「シンプルに、おおまかに」見ていくことが大切である。
<農業の基準となる面積単位>
1反=1000㎡=10畝=1a
※ 肥料の量の表示にN20kg/反とある場合、1㎡で使用したい場合は1/1000の量となる。
<土の中の栄養素の量>
年間1人あたりの窒素排出量は7〜8kgである。
田んぼ1反あたりには6〜7kgの窒素が含まれており、年間で250kgになる。
また、10aあたり重量にして700kgの微生物が存在している。
(2)遷移について
土壌は微生物や植物の作用により、段々と形成されていく。土地と生物群集は下記の通り変遷を遂げる。
裸地⇒地衣・コケ類の浸出⇒草原⇒陽樹林⇒陽・陰樹混合林⇒
1、裸地(岩石)
水を蓄える力もない状態。
2、地衣類、コケ類の進出
原始的な厳しい環境でも生成される。ミネラル・酸を作るために風化が加速度的に進む。
3、草原(物質循環が大きくなり、土地の改良効果が最も大きくなるステージ)
土壌に養分が増えるに連れ、植物が定着するようになる。1年草や豆科の植物が多い。(窒素固定するために土地の改良効果が大きい。)植物は樹木に比べサイクルが短いためにすぐに分解され、多量の有機物が発生する。
※ 窒素(N)、リン酸(P)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、
鉄(Fe)、マンガン(Mn)等、主に23種の栄養素が土の中に作られる。
4、陽樹林
アカマツ、白カンバなど。アカマツの木の表面には菌根菌、(根粒菌、フランキア放線菌等)が存在し、リン酸(P)を土壌に供給する。
5、陽樹・陰樹混生林
極相林は鳥取砂丘、白神山地。
<腐植について>
日本の国内の森林率は現在、70%となっており、再生率が高い。
20〜50年経つと草原も森林になっている。畑は草原以上に遷移が進まないように維持した状態。
草原土壌の平均腐植含有量1haあたり1,500t
森林土壌の平均腐植含有量1haあたり120t と、草原は森林の10倍以上である。
(3)、土壌の構造
良い土壌は団粒構造となっている。これは細かい土の粒が生き物の働きにより作られ維持されているからである。例えばミミズの糞やカビなどである。1gの土に微生物は1〜2億いると言われている。
Ex.赤玉菌:団粒構造を疑似的に作っている。
団粒構造は、単粒構造と比較して、水はけや水もち、通気性が良く、団粒の隙間、表面、内部などの様々な環境が多様な生き物が住む環境を提供する。
<生ゴミ処理>
堆肥化する場合、好気性の発酵の方が良い。半熟状態のままおくことで土中の微生物の活動が活発になるため。
注: 好気性 - 酸素呼吸
謙気性 - 無酸素
<腐植質>
表面にFe2+が存在しているため、マイナス電気を蓄えることができる。
(4)、土壌を構成するもの
母体(鉱物)、空気、水、有機物(落葉、腐植質など)のほか、エネルギーを作る栄養分として主に以下のものがある。(詳しくは配布資料参照)
栄養 - エネルギー(糖分)
- 原料(ミネラル(元素))(例:窒素はたんぱく質の原料)
・ 窒素:アミノ酸(タンパク質)を作る。
・ リン酸:遺伝子、骨の原料、細胞壁の構成材料。
・ 石灰(カルシウム):中和する
・ 苦土(マグネシウム):葉緑素の素。
2.土壌チェック
農園近辺の土を2人ずつに別れてチェック。土壌のphを計った後、顕微鏡で微生物が居ないかチェック。
(1)、phチェック方法
容器に土10ml、水(蒸留水)20mlを入り、3分間よく振る。
1昼夜置き、上澄みが透明になったらPh試験紙をひたし液体が上がってきたぎりぎりの部分の色を見比べる。
Ph
(小) 酸性 ← 7 → アルカリ性 (大)
(2)、調査結果
①崖の下の土
● ph6 地山が見られる場所。森林褐色土
②田んぼの土
● ph6 水田土壌の特徴あり。石灰を入れた方が良い。Feが着きやすくなる。
健康な田んぼの土は根が白く、倒れにくくなり美味しいお米ができる。
③崖の下の土
●ph5〜6 色は焦げ茶色に近い色味。
④果樹園の土
●ph5 茶色っぽく腐ったものが混じっている。
⑤川底の土
● ph7〜8 原水自体のphが高い。地山の鉱物の石灰分がphを上げている。
⑥休耕田の真ん中の土
● ph6
作物の種類によって栽培に適した土壌酸度が異なる。(作物の適性については、配布資料参照)。作物のほとんどは原産地の土壌の酸度を好むが、大陸由来のものはアルカリ性の土壌を好むものが多い。その場合、石灰などを混ぜてpHを調整する必要がある。
*補足:五島列島について*
四井先生の、パーマカルチャーデザインの実践地の写真紹介。
五島列島、福江の廃校を再生、集落自体をパーマカルチャーデザイン。
ジオフィルターによる水の循環、農産物の加工からインターネット通販に至る経済循環のデザインまで。
以上
