第五回講義録 資本主義、メディア、コミュニティ

| COMMENT(0) | TRACKBACK(0)

■日時:2008年9月9日 18:30~21:00

■場所:環境パートナーシップオフィス

■講師:
・設楽清和(パーマカルチャーセンタージャパン代表)
・ココペリ(ゲスト講師)
・中森正茂(ジャパン・フォー・サステナビリティ)

DSCF2893.jpg

■講義内容

1.エネルギー危機の時代を生きる(中森正茂)

・現代社会は地球の扶養力を超えており、成長の限界=崩壊の兆しが現われはじめている。その兆しの一つがピークオイル。これは石油生産量がピークに達し、減りゆく生産量と旺盛な需要とのギャップが急激に広がり、その後世界は予測困難な石油不足の危機的状況を迎えるであろうという考え方。

・ピークオイルの時期については様々な予測があるが、中央値で見ると2014年、楽観的で信頼性が低いと思われる予測を外すと2012年頃。

ハーシュレポートリチャードハインバーグなど多くの専門家はあらゆる社会レベルでの緊急な対策を提言しており、欧米ではサンフランシスコやポートランドのように危機に備えた対策をとっている自治体や、地域コミュニティー単位でエネルギー危機や気候変動に立ち向かおうとするトランジッションタウンリローカライゼーションのような運動もあるが、日本国内では殆ど議論されていない。

・欧米ではマスメディアやインターネット上でピークオイルの議論が盛んであるにも関わらず、国内で議論が起こらないのは、早期ピークオイル否定論や石油産業などのメディアを通じたプロパガンダやロビーイング活動が大きく影響していたり、マスメディアがスポンサーに不利なことを伝えられない状況が原因と思われる。

・真実を知るためには、メディアリテラシーを高め、個々人が情報発信し、仲間やコミュニティーで共有していくことが大切なのではないか。


2.資本主義、メディア、コミュニティ(ココペリ)

IMG_2404.jpg・自然界は生命が支えあっている生態系のしくみにより成り立っているが、人間はこれとは別の仕組みをつくってきた(人間界)。これが自然界や人間界の中でも折り合いがつかなくなってきた。持続可能な社会にするためには、その両方で生じている問題を解決する必要がある。

・グローバリゼーションにより人間界が暴走し、経済格差や環境破壊が深刻化している。

・DVD上映。なぜグローバル経済が南北格差を生みだしたのか?
過去、多くの国々はそれぞれの土地で豊かに暮らしていた。それが植民地時代に導入されたプランテーションにより、グローバル経済に巻き込まれて、先進国の都合に発展途上国の経済や生産者の生活が左右されるようになった。その結果、南北格差が拡大し、先進国の2割の人々が、世界の富の9割を占めるような世界となり、発展途上国の多くは貧困に喘いでいるのが現状。

・根本的にはお金の仕組みに原因があり、利子を返すためには経済を拡大せざるを得ず、そのために発展途上国や地球環境へしわ寄せが行かざるを得ない

・「1人あたりの国民総所得」、「平均寿命」、「成人HIV感染率」、「飢餓」、「穀物消費量」、「戦争」など地球の状況を世界地図上でみると、世界のゆがみと格差が同じ傾向を示していて、グローバル経済とリンクしていることが分かる。これらが示す「富の収奪」と「富の偏り」は、現代社会が持続不可能であることを端的に表している。

・持続可能な社会とは、有限な地球において、「人間界のしくみのゆがみをなくし」、「自然界のしくみと調和させる」社会である。多様性、循環、相互依存を基本とする小さな循環をつくることが大切なのではないか。

・グローバル経済の暴走に歯止めをかけるには、どうしたら良いだろう?

・メディアとは元来、コミュニケーションを目的としたものだったが、現在、街角に溢れている看板や広告などの情報は、人々に買わせるための情報で占められている("You are what you buy."(なにを買うかで、あなたが決まる)という看板)

・現代社会はスペクタクル(見世物)の社会。メディアによって、我々は一方的に消費させられる側に置かれていて、商品化された音楽の例が示すように自由に選んでいるつもりが予め与えられているのが実情である。

・システムの中で、消費者として生きるか、操作して金儲けする側に回るか、二者択一の選択しかないと思われがちだが、このしくみを意識できれば、奪われる側か奪う側かという構図の中に身を置かない選択もできるはず。

・近年活発なWTOへの反対運動=反グローバリゼーション運動の合言葉は「もうひとつの世界は可能だ」。こうした運動のネットワークができつつある。それをつなぐものとしてZINE(ミニコミ誌)、ラジオ(海賊放送、ネットラジオ)、フライヤー、インフォショップ(情報流通の場)などのメディアを使うのが大切であろう。

・インターネットはグローバル経済を加速させもするが、歯止めをかけようとする人々のツールにもなっている。
インターネット自体は善も悪もなく、仕組みを加速させ、その特性や問題を拡大させるもの。
しくみ自体を持続可能にして、それを加速、拡大させるためにインターネットのようなメディアをつかうことが大切なのではないか。


3.メディアの役割とコミュニティ(設楽清和)

・情報とは何か、どういう意味を持つかを掘り下げ、メディアの本質とその役割について考えてみたい。

・情報は事実ではなく、事実に対して伝える側の解釈や意図が込められたものであり、事実の一面性を示しているに過ぎない。事実が起きた時間や場所から遊離した情報は、それがあたかも事実であるかのように伝えられることにより、受け手が伝える側から操作されてしまう。

・かつてメディアは権力者による支配の手段であり、多くのメディアを活用することが権力維持に不可欠な要素であった。恐怖心を抱かせるような情報による威嚇や、幻想を抱かせるような情報による扇動などにより、人々を支配してきたともいえる。

・元来コミュニケーションの手段であったメディアは資本主義の発展に伴って、人々の欲望を刺激し続け、ただ与えられたものを消費すれば良いように、何も考えなくても良いように、人々を操作する役割を担うように発展してきた。

・新しいコミュニケーションであるインターネットの発達により、被支配者からの発信が可能となり、その双方向性による対話によって、支配構造を変えるための情報を共有し、相互にネットワークすることができるようになった。この新しいメディアはコミュニティーにおいて重要とさせる、ビジョンの共有や平等な情報の獲得を我々にもたらすことにになった。

・また、インターネット上で時間や空間を離れて新しい形のコミュニティーがつくられ、自分が受け入れてくれるコミュニティーを探せるようになった。コミュニティーを失った人にとって、こうしたコミュニティーの存在を知ることは大きな励みになるのではないか。

・コミュニティーがメディアを持つことで、我々は事実を様々な視点から捉えた情報を得ることができるようになる。こうしてコミュニティーとメディアが一体化することで、情報と現実が一体化でき、情報を有機化してより有効に活用することができる。

■質疑応答

IMG_2409.JPGココペリさん:与えられた常識から解放され、自分達が本当に欲しているもの、自分達の価値観を見つけてやり取りしていくこと、メディアをつくることは、前向きで創造的でとても楽しいこと。

Q)ピークオイルの話は危機感や不安感を煽られている感じがするが、それでも幸せに暮らせる方法を共有することが大切なのでは?
ココペリさん:危機感を煽るのは人々を絶望させる部分でもあるので、ポジティブな情報も同時に伝えていくことが大切。

設楽さん:メディアは大きな力になる可能性がある。希望や悩みなどの表現としてメディアを使うこともできる。自分を受け入れてもらえたという安心感につながる新しいメディアが出現してきていることに期待をしている。

Q)「もう一つの世界は可能」とは、具体的にどういうイメージなのか?
ココペリさん:生きていくうえで本当に必要なことはたかが知れている。それをベーシックに考えればよいのでは?

設楽さん:マスメディアは不要では?
ココペリさん:不要と思う。これまでメディアは独占されていたが、今は簡単に人々がメディアを使えるにようになってきているので、どんどん活用すべき。

設楽さん:より多くの人たちが情報発信することによって、より多くの視点からの事実の捉えが提示されることにより、メディアを通じてより世界がよく見えるようになるのでは?
ココペリさん:2CHのバッシングなど、ネガティブな側面や既存の資本主義の価値観を再生産するような側面もあり安易に期待はできない。意識的にポジティブな側面を広げていく必要がある。

設楽さん:グーグルストリートのようにメディアの発達はプライバシーをなくしていくのでは?
ココペリ:監視社会は深刻。使う側もどんどん抵抗感がなくなっている。そもそも中央集権型の今の社会から考え直す必要がある。

Q)新しいメディアの収入源をどう考えればよいか?
ココペリさん:既存社会との接点で、過渡期では折り合いをつけていくしかないのでは。
設楽さん:コミュニティーメディアとして、地域やコミュニティーでお金を出し合って運営していくこともできるのでは?

■講義資料

エネルギー危機の時代を生きる(PDFファイル 約954KB)

■受講生の声

【印象に残ったこと】
・なぜ日本でピークオイルのことが広がらないのかがまとめられていたこと
・グローバル経済がいかに貧困を助長しているかがよく分かった
・情報がグローバル化するのが悪いのではなく、経済と結びついてしまうことが問題だと分かった。
・メディアの大きな力に、人はいつの間にか支配されて生きていると気づいたこと
・"You are what you buy" 選んでいるのではなく、選ばされているという事実
・100%メディアを信じている友人たちに、真実を知るために何が必要なのかを伝えていきたい。
・メディアの力は「説得力があるけど、使う自分次第」ということ
・多種多様な溢れる情報の中から何を選択すれば良いかは、身体が知っているのでは?
・「自分達の価値観をつくっていることは楽しい」
・プロパガンダ、与えられた常識からの解放、「もう一つの世界は可能だ」、被支配者からの発信
・ネットラジオなどのオリジナルのメディアの実例が参考になったので、このアイディアを発酵させていきたい
・三つの講義の流れがとても良かった

【疑問、深めたいこと】
・日本でも危機感を持って全体を見直すにはどうしたら良いか、何ができるだろうか。
・経済的に貧しい国でも、自給自足できる国とできいない国がある理由が、植民地時代のプランテーション化であることが分かったので、そういう仕組みをなくすためにどうしたらよいか、もっと考えてみようと思う。
・自然と多く接する時間をとるなど、これから育つ子供達にどう情報を選択していくかを教えること。
・情報の影響を、自分達の文化を大切にするようなプラス方向に働かせるにはどうしたら良いか。
・国内でもどんどん芽生えている平和的なムーブメントを応援し、仲間になり、つなげるお役に立ちたい
・被支配者からの発信を集め、もっとシンプルな生き方を探していくと思います
・もうひとつの世界をより身近なものにするにはどうしたら良いか?むつかしく考えないことかな?
・いかにもうひとつの世界に生き、メディアを使って国や地域を越えてつながっていけるか、を深めたい
・いま自分が始めたことの意味を改めて深められたらと思った
・大空コミュニティ講座、ゲリラパーマカルチャー座談会を実現したい
・安心、安全の裏返しに恐怖が隠されている。それを恐れず、自分達が望むコミュニティづくりが平和で豊かな社会を築く
・お金の問題は全てに関わると思うので、もう一つの世界に移行するまでどう暮らしたらよいか。

トラックバック(0)

このブログ記事を参照しているブログ一覧: 第五回講義録 資本主義、メディア、コミュニティ

このブログ記事に対するトラックバックURL: http://www.pccj.net/mt/mt-tb.cgi/42

コメントする